【研究のポイント】
- ほぼ全ての初代個体が外来遺伝子をもつ、高効率なトランスジェニックマウス作製法を開発
- 細胞ごとの遺伝子導入のばらつきを高解像度に解析する手法を確立
- ゲノム編集技術と組み合わせ、初代個体で組織ごとの遺伝子機能を迅速に調べることに成功
- 医学・生物学分野の研究効率化が期待されるとともに、実験動物数の削減にも貢献
【概要】
滋賀医科大学動物生命科学研究センター、筑波大学、東京大学、大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点(WPI-PRIMe)、京都大学、ブリティッシュコロンビア大学らの共同研究グループは、外来遺伝子をマウスのゲノムへ高効率に導入する新しいトランスジェニックマウスの作製技術を開発しました(図1)。
トランスジェニックマウスは、遺伝子の働きや病気の仕組みを調べるために広く用いられています。しかし、従来の方法では、目的の遺伝子が導入された個体を得られる効率は、高くても約20%にとどまり、最初に得られる初代個体で直接表現型を解析することは容易ではありませんでした。そのため、交配を経て次世代を得てから解析する必要があり、研究に時間がかかることや、多くの動物を必要とすることが課題でした。
本研究では、DNAをゲノムに挿入する性質をもつ「トランスポゾンシステム」を用いたトランスジェニックマウス作製法を改良し、ほぼ全ての初代個体に外来遺伝子を導入できる条件を見出しました。また、この方法で作製した個体において、外来遺伝子が、発生の早い段階で導入されることを、次世代シーケンサーを用いた新しい解析法により明らかにしました。
加えて、本技術とゲノム編集を組み合わせ、初代個体で組織ごとの遺伝子機能を迅速に調べる手法を開発しました。従来の方法では解析までに1年以上を要することがありますが、本手法では、初代個体を用いることで、数週間から数か月程度で表現型を評価できることが見込まれます。
本成果は、疾患モデルマウスの作製や遺伝子機能解析を効率化し、研究期間の短縮に貢献することが期待されます。また、目的に合わない個体を減らすことで、動物実験における使用動物数の削減にもつながる可能性があります。

本研究成果は、2026年7月6日付で国際学術誌iScienceに掲載されました。
| タイトル | Highly efficient and low-mosaicism piggyBac transgenesis platform for rapid founder phenotyping |
| 著者 | Eiichi Okamura, Shoma Matsumoto, Eiji Mizutani, Kazuya Murata, Yoko Tanimoto, Tra Thi Huong Dinh, Hayate Suzuki, Akihiro Kuno, Woojin Kang, Natsuki Mikami, Tomoka Ema, Kento Morimoto, Kanako Kato, Tomoko Matsumoto, Nanami Masuyama, Yusuke Kijima, Genta Nagae, Masanaga Muto, Toshifumi Morimura, Hideto Mori, Fumihiro Sugiyama, Satoru Takahashi, Hiroyuki Aburatani, Knut Woltjen, Nozomu Yachie, Seiya Mizuno, Masatsugu Ema |
| DOI | 10.1016/j.isci.2026.116648 |
| 掲載誌 | iScience |
| 公開日 | 2026年7月6日 |