- マウス多能性幹細胞から精巣体細胞を誘導し始原生殖細胞と体外で精巣の形成過程を再現することに成功
- 生体材料を用いることなく精子系列細胞を試験管内で産生できる基盤技術を確立
- 男性不妊や性分化疾患の研究、家畜改良や絶滅危惧種の保全技術への応用に期待

大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点(WPI-PRIMe)の吉野剛史特任准教授(常勤)、林克彦副拠点長(同大学院医学系研究科教授)らの研究グループは、多能性幹細胞から性染色体依存的な雄性化を再現して精巣オルガノイドを構築することに成功しました。さらに、構築した精巣オルガノイドの中の精細管はテストステロン分泌細胞などに取り囲まれており、内部の精原幹細胞は、移植により精子を形成し、受精させることで健常な産仔を産出できることが確認されました。
これまで、マウスやヒトに加え、サイやウシなど様々な動物の多能性幹細胞から、精子や卵子の源となる始原生殖細胞は誘導されましたが、その発生を支える生殖巣体細胞の誘導研究は進んでいませんでした。研究グループが2021年にメス (XX型) のマウス胚性幹細胞に雌性化を再現させ卵巣体細胞へと発生させ、始原生殖細胞と共に卵巣オルガノイドを構築することに成功しましたが、従来法ではオス (XY型) の細胞でも卵巣型に変化してしまう問題がありました。
今回、研究グループは、オス (XY型) のマウス多能性幹細胞を用いてY染色体の働きを再現することで、生体組織を用いずに試験管内で精巣オルガノイドを構築することに成功しました。今後はヒトなど様々な動物に応用することで男性不妊治療への応用、種々の動物の精子作出技術の開発、さらには雄性化の仕組みの解明が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「Science」に、2月27日(金)午前4時(日本時間)に公開されました。また、同日付の米国科学誌「Science Advanceには、本研究と並行して本学と共同研究を実施してきた横浜市立大学主導の関連研究の成果が掲載されました(https://doi.org/10.1126/sciadv.adz0269)。あわせてご覧ください。
| タイトル | Reconstitution of sex determination and the testicular niche using mouse pluripotent stem cells |
| 著者 | Takashi Yoshino, Hiromichi Sasada, Takuya Sato, Tomonori Nakamura, Kenjiro Shirane, Hiroshi Ohta, Maki Kamoshita, Miki Inoue, Yuki Matsudaira, Chao Liu, Mnatsu Matsufuji, Makoto Tachibana, Ken-Ichirou Morohashi, Masahito Ikawa, Mitinori Saitou, Takehiko Ogawa, and Katsuhiko Hayashi |
| DOI | 10.1126/science.aea0296 |
| 雑誌名 | Science |
| 公開日 | 2026年2月27日 |