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研究
2025年1月29日
細胞間のmRNA移動が多能性幹細胞の運命をリプログラムすることを発見

新たな細胞間コミュニケーションの仕組みにもとづいた細胞運命制御技術の開発に期待

東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 ヒト生物学研究ユニットの武部貴則教授(兼 大阪大学 大学院医学系研究科/ヒューマン・メタバース疾患研究拠点(WPI-PRIMe)教授)の研究チームは、大阪大学 大学院医学系研究科の米山鷹介講師(東京科学大学 総合研究院 ヒト生物学研究ユニット 非常勤講師)らとの共同研究により、iPS細胞などの多能性幹細胞を用いた実験で、さまざまな遺伝子をコードするmRNA(メッセンジャーRNA)が細胞間を移動する現象を発見しました。また、この移動したmRNAが受け取った細胞に影響を与え、その運命を転換させることも明らかにしました。mRNAは、細胞の状態を決定する上で遺伝情報を担う極めて重要な生体分子です。近年、哺乳類において異なる種類の細胞間でmRNAが移動する現象が報告されていますが、移動したmRNAが受け取った細胞に対して生物学的に意味のある影響を与えるかどうかは未解明でした。
本研究では、ヒトとマウスの多能性幹細胞を直接接触させた共培養実験を通じて、マウス由来のmRNAがヒト細胞内に移動する現象を発見しました。このmRNA移動は、ヒトとマウスの細胞間で形成される膜突起(トンネルナノチューブ[用語3])によって媒介されることが確認されました。また、移動したマウスのmRNAには、TFCP2L1、KLF4やTFAP2Cなどの転写因子[用語4]をコードするものが含まれており、これらの因子がヒト多能性幹細胞をより未分化な状態[用語5]へリプログラムすることが判明しました。
本研究は、生体内で起こる複雑な細胞間コミュニケーションの解明に新たな視点を提供するだけでなく、iPS細胞等の作製におけるより安全な細胞リプログラミング[用語6]技術の開発につながる可能性があります。
本成果は、1月22日(現地時間)付けで「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載されました。また本論文は、PNAS: Vol 122, No 4のカバーアート(論文雑誌の表紙絵)として採用されました。

タイトルIntercellular mRNA transfer alters the human pluripotent stem cell state
著者Yosuke Yoneyama, Ran-Ran Zhang, Mari Maezawa, Hideki Masaki, Masaki Kimura, Yuqi Cai, Mike Adam, Sreeja Parameswaran, Naoaki Mizuno, Joydeep Bhadury, So Maezawa, Hiroshi Ochiai, Hiromitsu Nakauchi, S. Steven Potter, Matthew T. Weirauch and Takanori Takebe
DOI10.1073/pnas.2413351122
掲載誌Proceedings of the National Academy of Sciences
公開日January 22, 2025

細胞間のmRNA移動が多能性幹細胞の運命をリプログラムすることを発見|Science Tokyo(東京科学大学への外部リンク)