研究
2024年8月1日
X染色体不活化からの逃避を定量するソフトウェアを開発し、性差が生じるメカニズムの解明へ
大阪大学大学院医学系研究科の友藤嘉彦 招へい教員(遺伝統計学/東京大学大学院医学系研究科 助教/理化学研究所生命医科学研究センター 客員研究員)、岡田随象 教授(遺伝統計学/東京大学大学院医学系研究科 教授/理化学研究所生命医科学研究センター チームリーダー)らの研究チームは、1細胞RNA-seqデータを用いて、X染色体不活化からの逃避を定量するソフトウェアsingle-cell Level inactivated X chromosome mapping (scLinaX)を開発・実装しました。X染色体不活化からの逃避は遺伝子発現の性差を生じさせる機序の一つであり、疾患や生命現象の性差の原因になっていると考えられています。研究グループはさらに、このソフトウェアを用いて、scLinaXを大規模なscRNA-seqデータセットや1細胞マルチオミクスデータセットに適用することで、X染色体不活化からの逃避がリンパ球において特に強いことを示しました。
scLinaXは、一般的な1細胞オミクスデータに幅広く適用可能なソフトウェアであり、統計解析ソフトウェアR上で使用可能なRパッケージとして公開されています(https://github.com/ytomofuji/scLinaX)。scLinaXは遺伝子発現や形質、疾患の性差の解明に資する基盤的手法となることが期待されます。
タイトル | Quantification of escape from X chromosome inactivation with single-cell omics data reveals heterogeneity across cell types and tissues |
著者 | Yoshihiko Tomofuji*, Ryuya Edahiro, Kyuto Sonehara, Yuya Shirai, Kian Hong Kock, Qingbo S. Wang, Shinichi Namba, Jonathan Moody, Yoshinari Ando, Akari Suzuki, Tomohiro Yata, Kotaro Ogawa, Tatsuhiko Naito, Ho Namkoong, Quy Xiao Xuan Lin, Eliora Violain Buyamin, Le Min Tan, Radhika Sonthalia, Kyung Yeon Han, Hiromu Tanaka, Ho Lee, Asian Immune Diversity Atlas Network, Japan COVID-19 Task Force, The BioBank Japan Project, Tatsusada Okuno, Boxiang Liu, Koichi Matsuda, Koichi Fukunaga, Hideki Mochizuki, Woong-Yang Park, Kazuhiko Yamamoto, Chung-Chau Hon, Jay W. Shin, Shyam Prabhakar, Atsushi Kumanogoh, Yukinori Okada* (*責任著者) |
DOI | https://doi.org/10.1016/j.xgen.2024.100625 |
掲載誌名 | Cell Genomics |
公開日 | 2024年7月30日(オンライン) |