原田 慶恵
教授/PI
大阪大学、蛋白質研究所
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PRIMeの研究者
PRIMeでは、多様な分野、国籍、背景を持つ研究者がアンダーワンルーフで混ざり合い、学際的・統合的な研究ができる研究環境を醸成していきます。
量子センシング技術による細胞・オルガネラの物理量計測
ダイヤモンドナノ粒子を用いた量子センシング技術により、器官や細胞内の分子動態、代謝、温度、活性酵素、圧力などを捉え、恒常性の正常な維持とその破綻メカニズムを解明する。
研究概要
細胞内局所で起こる物理量(温度や圧力など)の変化や化学反応は細胞全体の機能に影響を与え、ひいては生命活動を制御していると考えられる。我々はこれまで、細胞内の物理化学反応を高い精度・空間分解能で計測可能な量子センシング技術の開発を進めてきた。ダイヤモンドナノ粒子内部の格子欠陥の一種である窒素空孔中心(NVC)に着目し、そ の電子スピン量子状態を制御可能な光検出磁気共鳴(ODMR)顕微鏡を開発した(Figure 1)1。 量子センシング技術を用いることによってこれまでに、細胞内のpHや生体分子相互作用の影響を受けずに細胞内の絶対温度を計測する技術の開発、細胞内局所の熱伝導率が水とは著しく異なることの実験的証明、細胞膜の粘性や蛋白質1分子の構造変化を三次元計測することに成功している。2-5
WPIプログラム(PRIMe)では、FNDによる細胞・オルガノイドの量子センシングを実践し、生命機能や病態と結びつく細胞の物理・化学反応を明らかにする(Figure 2)。そのために、細胞・オルガノイドに FNDを効率的に取り込ませる方法の開発をおこなう。同時に、FNDの表面を化学的に改変し細胞内での局在を制御する技術の開発を行う。取り込まれたFNDを量子センシングに応用し、オルガノイド形成時に細胞内の物理パラメータがどのように影響するのかを明らかにする。本研究により、細胞の分化やオルガノイド形成の早期予測が可能になると考えられる。また、卵母細胞内の物理量化学場が不妊などの病態にどのような影響を与えるかを明らかにする。細胞局所の物理化学状態の異常が恒常性維持機構の破綻へとつながり特定の疾病に関与するという新しい病態発症のメカニズムの発見に至る可能性を持つ。
参考文献